exhibition archive | 菅谷奈緒 "days"
菅谷奈緒 "days"
2011.10.22(sat) - 2011.11.12(sat)
closed on Mon & Tue
13:00-19:00

opening party: 2011.10.22(sat) 17:00-
performance: 10.22(sat) 16:00- / 11.12(sat) 16:00-


菅谷奈緒の新作“days”は、地球の気象条件が、軍事演習と密接にかかわっていること、そしてその情報が、何気ない日常生活の背後でしっかりと流通しているということを、不思議な説得力で語りかけてきます。

人間の行動が自然の営みに影響されないわけには行かないという事実を、しっかりと自身の行動規律の中に刻み込み、日々続けられている活動があります。自衛隊や在日米軍の軍事演習は、常にその日の気象条件をつぶさに検討して行われています。条件に適う場合、演習は実施され、その海域での漁業の操業は制限されます。海上保安庁によって行われる水路業務の一環として、その情報はNHKのラジオから放送され、漁業関係者の知るところとなります。国家という人に定められた単位の活動は、自然の営みに軽々と乗り越えられていく。これは、地球という小さな惑星の上で、自然の脅威を認識しながら生きる人間にとっては当然の対応といえるでしょう。しかし、はたしてその努力は、日常的に軍事以外の分野で希求されてきたといえるのでしょうか?

震災と原発事故は、これまでにない窮境にわたしたちを立たせています。放射性物質を含む微粒子は、地球上を流れる空気の流れに従って拡散しました。皮肉なことに、このときほど、惑星上の気体の動きに対して鋭敏に神経を働かせたことがあったでしょうか。人間が都合上、地上に割り当てた行政の区割りを軽々と越えての拡散は、人間の活動が自然の営みに影響を受けざるを得ないことを、あらためて知らされることになりました。自然を律するということが驕りにすぎないことは、これまでもいろいろなかたちで言及されてきました。しかしそのことに対応するための努力が、日常においてではなく、軍事優先で進められてきたのだとしたら、これほどの本末転倒はないでしょう。菅谷奈緒の新作を構成する天気図と水路業務を伝えるラジオ音声は、静かにこうした疑義をつきつけてきます。



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